新発売、ホーム オーロラ
「新商品 ホーム オーロラ」!
デカデカと書かれたそのポップアップは、その商品の存在を大いにアピールしていた。
「家で見れるオーロラか。」
一人の男が商品を手に取る。
彼の名は智史(さとし)。自然が好きな智史は、それが体験できるホーム オーロラにとても興味を持った。
ちょっと高い値段だけれど、買ってみよう。
こうして智史はホーム オーロラを購入した。
家に帰った智史は早速ホーム オーロラを起動させる。すると暗くした部屋に本物のオーロラのような光が満ちた。
「凄い!買って良かった!見たい時に見れるし、最高の買い物だ!」
智史は大いに喜んだ。
さて、次の日であった。智史は会社に勤めていたが、とある一件で大きなミスをしてしまった。そしてこっぴどく叱られる智史。
とりあえず会社全体でフォローし、大きなミスは改善された。
だが、智史の心は晴れなかった。そしてこう思った。
「あのホーム オーロラで癒されよう。」
早速家に帰った智史はホーム オーロラを起動した。綺麗に映るオーロラの光。癒しに浸る智史。しかし、今日会社で大いに怒られたことを思い出し、大自然の中、突然虚しい気持ちが湧き出してしまった。そして智史はホーム
オーロラのスイッチを切った。
「僕なんかちっぽけな存在なんだ。自然なんか僕を独りにさせるだけだ。」
その後、智史は会社で仕事のミスが続くようになった。そして独り耐える智史。辛い日々が続いた。
そしてあのホーム オーロラはほこりを被り、家のどこかへと消えてしまった。
そんな中、職場の休み時間にホーム オーロラの話が出た。どうやらもう売っていなくて、しかも評判自体も悪いどころか良い商品だったという。
この話を聞いた智史は実際に買ったことを思い出した。そして皆にその話をした。
感心する同僚たち。そんな中とある女性、知紗(ちさ)が智史にこう言った。
「私もホーム オーロラが気にはなっていたの。でももう売り切れちゃって……だから、ちょっと見てみたいの!ホーム オーロラの光を!」
知紗は可愛らしい女性だった。少し気になっていた智史は、彼女のためにホーム オーロラを自宅で探した。すると見つかったものの、壊れかけていて、作動しなかったのだ。
しかし、智史は諦めず、いわゆるおもちゃの病院的なので直すことにした。そして無事、ホーム オーロラは修理が完了したのだ。
そして智史と知紗は、智史の家でホーム オーロラで起動させた。オーロラは綺麗に映った。目を輝かせる知紗。しかし智史はあの虚しさを思い出していた。その気持ちが顔に出ていたのか、知紗は智史にこう話しかける。
「どうしたの?何故悲しんでいるの?」
智史はこう言った。
「僕の仕事ぶりを見ただろう。いつも怒られて…僕はちっぽけな存在なんだ。」
そして涙を伝わせた。すると知紗はこう告げた。
「智史さん、あなたが自然を好きなことは知っていたわ。だってホーム オーロラを買うほどだもの。それに……」
知紗は続けた。
「私、そんな智史さんがずっと好きだったんだよ。」
急な発言に驚く智史。知紗は続けた。
「智史さん、あなたはもうひとりぼっちじゃないんだよ。だから…一緒に世界を、大自然を生きて行こう。」
そう告白された智史は知紗のことを受け入れるのであった。